電力システム改革論を斬る!
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2013/01/18
新政権の下、電力供給システム改革議論はどうすべきか
-レッテル貼りを超えた議論を-昨年末の衆議院選挙・政権交代によりしばらく休止状態であった、電力システム改革の議論が再開されるようだ。茂木経済産業大臣は、12月26日初閣議後記者会見で、電力システム改革の方向性は維持しつつも、タイムスケジュール、発送電分離や料金規制撤廃等、個々の施策をどのレベルまでどの段階でやるか、といったことについて、新政権として検証する意向を表明している。 続きを読む
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2013/01/15
ネガワットの市場取引を現実的に考える
「節電」が新たな供給力として市場に出て行く
東日本大震災以降、原子力発電所の停止によって電力需給ひっ迫が継続する中で、ネガワットという言葉を耳にしたことがある読者は多いのではないか。要は節電のことなのであるが、単に電気を節約するだけでなく、「節電を取引する新たなビジネス」といった意味合いでしばしば語られている。 続きを読む
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2012/12/18
ハリケーン・サンディによる米国東部大規模停電が問いかけたもの
-停電と電力システム論に関する日米比較-日本で大きく報道されることはなかったが、2012年10月末に米国東海岸に上陸したハリケーン・サンディは、ニューヨーク市を含め合計850万軒という過去最大規模の停電を引き起こした。ニューヨークでも計画停電の実施に加え、ほぼ1ヶ月間停電の続いた地域があったなど、被害の全貌が明らかになりつつある。一方わが国では2011年3月11日の東日本大震災直後の首都圏での停電や延べ10日間にわたって行われた計画停電が記憶に新しい。 続きを読む
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2012/10/19
望ましい電力市場と発送電分離の姿
さる9月14日、「革新的エネルギー・環境戦略」が政府のエネルギー・環境会議で決定された。同戦略は、9月19日の閣議決定では参考文書との扱いに留まったものの、発送電分離などを含む電力システム改革を本年末までに断行(「電力システム改革戦略」(仮称)を策定)する、としている。また、公正取引委員会も、電力会社の発送電分離に加え、発電・卸部門と小売部門の分社化を独自に9月21日に提言した。 続きを読む
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2012/10/11
公取委の発電と小売の分離に関する提言を考える
公正取引委員会(以下、公取委)は9月21日、「電力市場における競争のあり方について」と題する提言を公表した。公取委は、日本において電気事業の規制改革の議論が始まって以降数度、電気事業の規制の在り方に関する提言を行ってきている。今回の提言の「売り」は、巷間よく言われる発送電分離だけでなく、電力会社の発電・卸部門と小売部門の分社化を提言している点であると思われるので、今回はこの論点について考えてみたい。 続きを読む
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2012/09/11
容量市場は果たして機能するか?~米国PJMの経験から考える その2
前回はPJMの電力市場の概要とその容量市場の変遷を紹介した。今回はその続編である。PJMの容量市場を巡る賛否両論、その他の地域の動向を紹介しながら、わが国に容量市場を適用する場合の課題を考察してみたい。 続きを読む
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2012/09/03
容量市場は果たして機能するか?~米国PJMの経験から考える その1
前回、前々回でも紹介した通り、卸電力(kWh)取引の価格シグナルだけで、自由化された電力市場で適切な予備率が維持されることはなく、発電設備容量(kW)保有に対するインセンティブが必要であるとの認識が、電力市場関係者の間では一般的になりつつある。その際、一つの選択肢と考えられるのが「容量市場」である。 続きを読む
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2012/08/22
卸電力市場活性化議論に持続性確保の視点を
電力システム改革の議論において、卸電力市場の活性化が大きな論点となっている。7月に公表された「電力システム改革の基本方針」でも「事業者間の競争を促進し、かつ、特定の供給区域の枠を越えて最適な発電効率を実現するためには、卸電力市場の活性化が大きな課題」と指摘している。 続きを読む
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2012/08/15
テキサス州はなぜ電力不足になったのか
つるべ落としとなっているテキサス州の予備率
テキサス州は、米国における電力自由化の成功例として、しばしば取り上げられる。ところが近年、供給予備率の低下が大きな問題となっていることは、意外に知られていない。電力会社の電源建設が進まないためで、今後も予備率の低下が続く見通しとなっている(図1)が、これには自由化の進展と深い関係がある。 続きを読む
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2012/08/06
在米のエンジニアに聞く米国スマートグリッド事情
米国では発送電分離による電力自由化が進展している上に、スマートメーターやデマンドレスポンスの技術が普及するなどスマートグリッド化が進展しており、それに比べると日本の電力システムは立ち遅れている、あるいは日本では電力会社がガラバゴス的な電力システムを作りあげているなどの報道をよく耳にする。しかし米国内の事情通に聞くと、必ずしもそうではないようだ。実際のところはどうなのだろうか。今回は米国在住の若手電気系エンジニアからの報告を掲載する。 続きを読む
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2012/07/20
オーストラリアの電力市場から、価格メカニズムを考える
オーストラリアの電力市場について
オーストラリアは、1998年に公営の電気事業を発電・送電・小売に分割民営化し、電力市場を導入した。ここで言う電力市場は、全ての発電・小売会社が参加を強制される、強制プールモデルと言われるものである。電気を売りたい発電事業者は、前日の12時30分までに卸電力市場に入札することが求められ、翌日の想定需要に応じて、入札価格の安い順に落札電源が決定する。 続きを読む
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2012/07/02
新電力にベース電源を分配する前になすべきこと
地域独占と総括原価主義の特権?
6月21日の第7回電力システム改革専門委員会で、卸電力市場の活性化をどう図るかが議論になった。その際複数の委員から、電力会社が長期相対契約で確保しているJパワー等卸電気事業者の供給力について、一部市場に放出すべきとの意見があった。 続きを読む
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2012/06/18
発送電分離の正しい論じ方
電気事業制度のあり方を議論する電力システム改革専門委員会第6回(5月31日)において、発送電分離、つまり電力会社の送配電部門の中立性強化策が議論になった。具体的には、事務局が示した以下の2案について議論がなされた。 続きを読む
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2012/06/14
広域系統運用者はアンバンドリングへの解となり得るか
電気事業制度のあり方を議論する電力システム改革専門委員会の第5回会合(5月18日開催)では、事務局の経済産業省から電力小売の「全面自由化」と並んで「広域系統運用者」の設立が提案され、その後、引き続き第6回(5月31日)でも審議が続いている。現時点では新組織の定義や機能がはっきりしておらず、専門委員会でもこれをいわゆるISO(独立系統運用者)と呼んで良いかどうか含めて議論となったようだ。 続きを読む
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2012/06/11
スマートメーターに夢を託せるか
スマートメーターについては、以前も本欄でとりあげたが、再度、少し視点を変えて取り上げてみたい。
まず、「モノのインターネット(IOT)サービス」について。
「モノのインターネット(IOT)」の夢が花開く?
モノのインターネット(IOT:Internet of Things)とは、文字通り全てのモノがインターネットに繋がり、情報をやりとりする世界を指す。 続きを読む
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2012/06/07
日本の停電時間が短いのはなぜか
停電はなぜ起こるのか
停電は多くの場合、電気設備の故障に起因して発生する。とはいえ設備が故障すれば必ず停電するわけではない。多くの国では、送電線1回線、変圧器1台、発電機1台などの機器装置の単一故障時に、原則として供給支障が生じないように電力設備を計画することが基本とされている(ただし影響が限定的な供給支障は許容されるケースが多い)。 続きを読む
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2012/05/28
日本の地域連系が弱いのは電力会社の陰謀か
日本の電力系統の特徴にまず挙げられるのは、欧州の国際連系が「メッシュ状」であるのに対し、北海道から九州の電力系統があたかも団子をくし刺ししたように見える「くし形」に連系していることである。
「メッシュ状」系統は、各部の「流れやすさ」に応じて電気が勝手に流れるため、いったん事故が起きると連鎖的に事故が拡大して広域停電が起きやすい一方、「くし形」系統は、電気の流れを監視・制御しやすいため広域停電が起きにくいことがメリットといわれる。 続きを読む -
2012/05/21
評価が分かれるテキサス州の電力自由化
-新規参入は活発だが、価格は上昇。最近は輪番停電も米国における電力自由化の失敗例としては、電力危機を引き起こしたカリフォルニアの事例が有名である。他方、成功例としてテキサス州があげられることがある。
テキサス州の自由化という場合、正確にはテキサス州の面積の75%をカバーしているテキサス電力信頼度協議会(ERCOT)のエリアにおける小売自由化を指す。ERCOTの最大電力は6,800万kW程度であるから、東京電力より一回り大きい程度の需要規模である。この中に大手私営電力5社と公営電力2社が存在し、大手私営電力5社が自由化対象である。 続きを読む
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2012/05/17
スマートメーターは「光の道」と似ている
-スマートメーターをメタボにするな東京電力に寄せられたスマートメーターの仕様に関する意見がウェブ上でオープンにされている。また、この話題については、ネット上でもITに明るい有識者を中心に様々な指摘・批判がやり取りされている。そのような中の一つに、現在予定されている、電気料金決済に必要な30分ごとの電力消費量の計測だけでは、機能として不十分であり、もっと粒度の高い(例えば5分ごと)計測が必要だという批判があった。 続きを読む
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2012/05/15
いま話題の「リアルタイム市場」とは何か
-欧州式と日本式4月25日の第4回電力システム改革専門委員会において、電力会社幹部(勝野中部電力専務)から、受給直前まで活用できるリアルタイム市場の新設を検討している旨、発言があった。これに対し、委員である八田達夫大阪大学名誉教授から、「それは時間前市場であって、欧州で一般的なリアルタイム市場とは違う」との指摘があった。結論から言うと、この指摘は正しい。ただし、欧州式のリアルタイム市場よりも、この日本式リアルタイム市場の方が「市場らしい市場」なのだ。 続きを読む