環境外交:気候変動交渉とグローバル・ガバナンス
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2013/08/02
補論「本格稼働を始めた二国間クレジット制度」
本連載でたびたび紹介してきた二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism、以下JCM)注)が、本年に入って本格的にパートナー国を増やし始めている。
本年1月8日にモンゴル政府との間で、同制度の設置に関する二国間文書(「日・モンゴル低炭素発展パートナーシップ」)(後掲)への署名を行ったのを皮切りに、バングラデシュ(3月19日)、エチオピア(5月27日)、ケニア(6月12日)、モルディブ(6月29日)、ベトナム(7月2日)との間で同様の文書を交わし、7月半ばの時点で、署名国は6カ国に上る。 続きを読む -
2012/12/28
最終話(3の3)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その3)」
4.日本の取り組み(3):二国間オフセット・クレジット制度
世界全体で低炭素成長を実現していくためには、省エネ、再生可能エネルギーなどの低炭素技術を活用するインフラへの投資を世界全体で促進していく必要がある。エネルギー効率の水準が低いが、エネルギー需要増大が見込まれる途上国において特にその必要性は高く、これらの国々において低炭素関連インフラへの投資が十分かつ速やかに行われるか否かは、今後数十年の経済成長とCO2排出の方向性を左右する決定的に重要な要素であると言って良い。 続きを読む
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2012/12/27
最終話(3の2)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その3)」
2.日本の取り組み(1):東アジア低炭素成長パートナーシップ
これまで本連載において触れたとおり、これは、東アジア首脳会議(East Asia Summit)の枠組みを活用して、温暖化対策の実際的な地域協力を進めていくべきとして日本が提案したものである。
背景には、世界と日本にとってのこの地域の重要性があげられる。EASメンバー国18カ国は世界の成長センターであるとともに、最大の温室効果ガス排出地域でもある。 続きを読む -
2012/12/26
最終話(3の1)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その3)」
カタール・ドーハでのCOP18が終わった。
昨年の南アフリカ・ダーバンでのCOP17と同様、30時間余の交渉延長の末に、一連の合意文書「ドーハ気候ゲートウェイ(Doha Climate Gateway)」がとりまとめられた。COP17で立ち上げられたのが「ダーバン・プラットフォーム(Durban Platform)」だったので、一年かけて「プラットフォーム」が「ゲートウェイ」になったわけである。言葉の響きからすると足踏み感、遅々として進まない交渉といった感がなくはない。 続きを読む -
2012/11/27
第7話(2の2)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その2)」
2.日本の提案:「世界低炭素成長ビジョン」
将来枠組みの構築に向けた国連交渉への取り組みとあわせ、日本が提案し、様々な形で具体化を進めているのが、「世界低炭素成長ビジョン」である(図表7-3参照)。
これは、国連交渉における新たな法的枠組みの構築と並行して、より実際的な地球温暖化対策として、技術、市場、資金を総動員しながら、世界全体をCO2排出を増やさない形での経済成長、「低炭素成長」に導いていこうというものである。 続きを読む -
2012/11/22
第7話(2の1)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(その2)」
本年の気候変動交渉もいよいよ佳境を迎え、今月26日からカタールのドーハでCOP18が開催される。
第7話では、今後の国際交渉において日本が目指すべき新たな国際枠組み像について若干の検討を試みることとしたい。
ここでは、COP17でのダーバン合意を受けて現在行われている、将来枠組みを巡る議論とも大いに関連する論点が含まれている。そして、その多くは現行の「リオ・京都体制」の抱える問題点からの教訓に基づく。 続きを読む -
2012/11/13
第6話(3の3)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(1)」
3.気候変動問題対処のためのグローバル・ガバナンス:3つの視点
それでは、「リオ・京都体制」の経験、教訓を踏まえながら、どのようなグローバル・ガバナンス、国際枠組みを構築していくべきか。
まずは、環境・気候変動問題を規律する国際枠組みを考えるにあたり、必要と思われる3つの視点について触れることとする。 続きを読む -
2012/11/09
第6話(3の2)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(1)」
2.「リオ・京都体制」の限界:主要国の問題と日本の課題
20年前の1992年のリオ地球サミットで採択された国連気候変動枠組条約。その5年後の1997年のCOP3で採択された京都議定書。この2つの条約が、気候変動問題を規律する国際的枠組みを構成している。
日本では、自国で開催された国際会議で採択された京都議定書にもっぱら注目しがちである。昨年のCOP17の際には、京都議定書の下での数値目標の義務を日本が引き続き受け入れるか否かの問題を報ずる中で、一部のメディアで「京都体制」なる表現もみられた。 続きを読む -
2012/11/07
第6話(3の1)「ポスト『リオ・京都体制』を目指して(1)」
第5話までは、外からは見えにくい気候変動交渉について、少しでも臨場感を持って理解してもらうため、COPの交渉現場での議論と日本の対応に焦点をあてて論じてきた。
「武器無き戦争」に臨む以上、それに勝つ(少なくとも負けない)事は重要である。そのための様々な戦術行動についても、これまでに触れた。しかし、それだけに終わってはならない。 続きを読む -
2012/10/24
第5話「気候変動交渉の舞台裏(2):『悪魔は細部に宿る』」
1年の気候変動交渉の集大成は「COP決定文書」
1年間の気候変動交渉の議論の結果は、最終的には年末のCOPの決定文書に集約される。それまでの様々な国際会議で作成される膨大な数の文書は、基本的には中間的な成果物である。もちろんG8サミットで作成される首脳文書は相当の重みを持つものだが、G8のみが当事国であり、中国やインドなどから「自分達とは関係ない」と言われればどうしようもない。 続きを読む
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2012/10/15
第4話「気候変動交渉の舞台裏(1)」
前2話では、時系列的にCOP16,COP17に至る気候変動交渉の流れと日本の対応について触れてきた。今回から2回にわたり、気候変動交渉の現場を様々な切り口から紹介してみたい。
国連の気候変動交渉は外からはなかなか見えにくい。
まず、COP(コップ)という言葉の響き自体が、馴染みにくい。 続きを読む -
2012/09/28
第3話「3/11の衝撃とダーバンCOP17:“Down but not out”」
COP16に至るプロセスで日本が直面したのが、京都議定書「延長」圧力という、外からの試練であったのに対し、COP17で直面したのは、いうまでもなく、2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故による内からの試練であった。 続きを読む
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2012/09/18
第2話「カンクンCOP16:京都議定書「延長」問題を巡る攻防」
国際社会から大いなる期待が寄せられたコペンハーゲンのCOP15は、大いなる失望を残して終わった。COP15で大きく傷ついた、国連の下での多国間主義(マルチラテラリズム)を如何に立て直すか? それが、COP16に向けた国際交渉の流れを規定する通奏低音であった。 続きを読む
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2012/08/29
第1話「気候変動交渉20年:コペンハーゲンへの道」
1990年は「気候変動交渉元年」ともいうべき年である。前年にベルリンの壁が崩壊し、米ソ首脳による東西冷戦の終結が宣言されたこの時期、世界の関心は地球環境問題という新たな課題に向けられ始めていたが、その筆頭が気候変動問題であった。 続きを読む