環境と経済が両立に向かう『土壌汚染対策』とは(その3)

日本の土壌汚染対策法の特徴


株式会社FINEV(ファインブ)代表取締役

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 土壌汚染対策法は、国民の健康保護を目的として2002年に制定され、2003年2月15日から施行されました。土壌汚染対策法は、以下のような特徴をもっています。

土地所有者責任
汚染者責任原則を基本としているものの、法に基づく土壌汚染対策の責任者は第一義的には土地所有者となっています。汚染原因者の特定や汚染原因者への費用求償については実質的には民間同士での解決に委ねられています。
一律の基準
25種類の有害物質を法の対象(特定有害物質)としており、土壌溶出量基準と土壌含有量基準が定められています。土地利用用途等に関わらず一律の基準となっています。

 当初、同法では、水質汚濁防止法に基づく有害物質使用特定施設の使用の廃止時等に土壌汚染調査を義務づけました。
 2003年2月の土壌汚染対策法施行以降、2012年末までに9,000を超える有害物質使用特定施設が廃止されていますが、引き続き工場等の敷地として利用する場合などには、調査が猶予され、2013年3月末現在の同閉鎖施設の約8割にあたる7,000件以上が調査猶予となっています。
 一方で、法律により、土壌汚染の調査及び対策義務は第一義的に土地所有者であることが示されたため、法律の義務付けがなくても、土地購入前に土壌汚染調査を行うことが実務上定着しました。法人間の不動産取引では、事前に土壌汚染調査を実施するようになり、いわゆる自主的なリスク管理として土壌汚染調査や対策が実施されることになりました。
 不動産取引の際に、当事者間で自主的に実施する土壌汚染対策として、不確実性が少なく、短期間に結果がわかりやすい掘削除去の手法(汚染土壌を外部に搬出して処理する対策)が多用されました。

 こうした状況で法律が施行され、5年程度経過してから、土壌汚染対策法の改正に向けた議論が行われました。以下の3つの課題が指摘され、これらの課題解決に向けて2009年に法改正が行われることになります。

  1. 法律に基づかない調査等で土壌汚染が判明する事例が多い。
  2. 土壌汚染対策のうち掘削除去が多用されている。
  3. 搬出土壌の一部に不適切な取り扱いがある。

 改正法における主な変更点は以下の通りとなっています。

土壌汚染調査の契機を拡大し、従前の有害物質使用特定施設の使用の廃止時等に加え、3000㎡以上の土地形質変更時に届出が義務付けられ、都道府県での判断のもと、調査が命じられるようになりました。
法律に基づく調査の結果、指定基準(土壌溶出量基準、土壌含有量基準)を超える土壌汚染が判明した際に指定される「指定区域」が二分され、「要措置区域」と「形質変更時要届出区域」に分類されました。

「要措置区域」は健康被害のおそれがあるため、汚染の除去等が必要な区域であり、都道府県知事から封じ込めを基本とした措置の実施が指示されます。ただし、指示の内容に関わらず、対策手法の大部分は、土壌の掘削除去となっています。
「形質変更時要届出区域」は、健康被害のおそれがないため、汚染の除去等が不要な区域ですが、土地の形質変更時に14日前までの届出が義務づけている他、地下水に影響を与えないよう施工する等の制限が課されています。実質的に建設工事等に伴う費用が増加しています。

自然由来の土壌汚染については、改正前には法の対象外であるとされていましたが、法改正により法対象であることとされました。

 2010年4月1日より改正土壌汚染対策法が施行され、4年が経過し、様々な課題もでてきています。日本の土壌汚染対策法は、比較的少ない対象物質に対して一律の厳格基準を適用している一方、自主対策が多く、法律の関与が比較的少ない中で運用されています。自主対策による裁量が当事者にある一方で、市場では、不確実性の高いリスクに対しては保守的な対策が取られる傾向にあります。これが様々な予期しなかった状況を生み出すことにもなっています。

土壌汚染対策法及び関連基準等の制定経緯

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