身近な化学物質による水環境汚染


常葉大学 社会環境学部 助教

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 PPCPsの含有成分は、開発の段階で様々な毒性が評価され、その安全性が精査されていることから、適切に使用している限り、ヒトの健康に直接的に有害な影響を与える可能性は極めて低いと言えます。しかし、生体に対して何らかの生理活性を有する化学物質を、非意図的に体内に取り込むことに起因するリスクを評価する必要はあります。私たちの生活に欠かすことのできない水道水は、河川や湖沼、地下水を原水としており、これがPPCPs含有成分で汚染された場合、水道水を介して体内に取り込む可能性があることから、水道水及び水道原水中のPPCPs含有成分の存在実態が調査されています。その結果、数種の医薬品有効成分が検出されたことが報告されていますが[7,8]、その濃度は極微量であったことから、ヒトに対する健康リスクは極めて低いと考えられています[9]。しかし、水道水及び水道原水中のPPCPs含有成分の存在実態に関する情報は十分と言えず、環境水中の濃度や排水処理過程における挙動について、今後も継続した調査が必要です。

 PPCPs含有成分による水環境汚染については、ヒトへの健康影響だけでなく生態系に対するリスクも評価する必要があります。近年では、下水処理水放流域に生息する魚類の体内中から、多種の医薬品有効成分が検出されたことが報告されています[10,11]。上述したように、PPCPs含有成分のヒトに対する影響は精査されていますが、魚類や水生昆虫、藻類といった水圏に生息する生物に対する影響については、ほとんど明らかにされていません。従って、PPCPs含有成分が生態系に対してどのような影響を与えるかといった議論を進める為には、生態毒性評価に関する知見の蓄積が待たれます。

 PPCPsの中でも医薬品類の有効成分は、病気の治療や予防に不可欠な、とりわけ利便性の高い化学物質であることから、それらの使用を直ちに中止することは現実的ではありません。しかし、医薬品類の使用による水環境汚染が起因となり、将来的に健康被害が現れることや、生態系に対して不可逆的な影響を与えてしまうことは避けたいことです。従って、これまでの化学物質による環境汚染問題以上に、高度なリスク評価が必要と言えます。そのために、私たちが日常的に使用している化学物質による水環境汚染や、水生生物に対するリスク評価の高度化に寄与する調査及び研究のさらなる進展が望まれます。

<引用文献>

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[4]
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[6]
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Benotti J.M. et al., Environ. Sci. Technol., 43(3), pp 597-603 (2009).
[8]
Kuroda K., et al., Environ. Sci. Technol., 46(3), pp 1455-1464 (2012).
[9]
WHO, Pharmaceuticals in drinking-water (2011).
[10]
Subedi B. et al., Environ. Sci. Technol., 46(16), pp 9047-9054 (2012).
[11]
Foltz J. et al., Chemosphere, in press.

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