原子力行政が取り組むべき優先課題

―放射性物質に対する国民の安心のために―


国際環境経済研究所主席研究員

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3.実地ストレステストを済ませた原発は早期再稼働を

 次に、原子力発電所の再稼働問題について触れたい。今回の東日本大震災で津波からの避難民を受け入れた東北電力の女川原発や、東通の原発はあの震災を乗り越えた。いわば未曾有の「ストレステスト」を実地でクリアしたのである。

 その原発をモデルにして、東電の福島第一の事故は何が問題だったのか、他の原発に不足しているものは何か、それは設備なのか管理体制なのかなど、徹底的に比較検討すれば、今後の各地の原発の防災対応の参考になるはずである。

 わが国の電力事情を考えた場合には既存の原発の再稼働は必要であるが、そのためには今回の事故の教訓をもとに、考えられるありとあらゆる事態を想定した安全対策を徹底的に施すべきである。少なくとも東北の早期復興を促す意味で、無事だった東北電力の原子炉は一日も早く再稼働するべきではないのか。

4.安全神話からの脱却は放射性物質の排出規制から

 最後に、放射性物質の排出規制の必要性について述べる。不幸にして事故が起きてしまった場合に備え、たとえば、原子炉の圧力を開放するベントの排気を浄化して放出するなどの、放射性物質の拡散を極力減らすための対策が求められる。

 ベント排気中には水素およびキセノン、クリプトンなどの希ガスが含まれるがほとんどは水蒸気であろう。冷却して吸着処理すれば 90Sr, 137Cs, 134Cs, 131I などの拡散はかなり減らせるのではないか。これらの行動を民間企業である電力会社に義務付けるための手段として、放射性物質の排出規制が考えられる。

 水質汚濁防止法での汚濁物質や水素イオン濃度の規制、大気汚染防止法のばいじん、硫黄酸化物、窒素酸化物の排出規制などの様々な汚染物質の排出規制がある中で、原子力発電所の放射性物質については、絶対に排出されることはないという安全神話を前提に、排出規制値が明らかでない状態を続けてきた。そのため、規制がないから出てしまったものには責任が及ばないという奇妙な法解釈が生まれた。

 原子力発電所からの放射性物質の排出に関してルールと罰則が必要であり、それに基づいて電力会社による「絶対に排出させない」という取組みが今以上に強化される。当然のことながら規制値は「検出されないこと」が議論の起点になる。いま、原発からのベント排気の処理がどうなっているか私は全く知らないが、少なくとも再処理工場の放射性物質管理体制と同等の対策を義務付けるべきであろう。

 以上の4点について、発足した原子力規制委員会および原子力規制庁を始め、環境省や経済産業省、内閣府など関係省庁および国会議員による速やかな対応を求めたい。

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